四字熟語で2021年の観光を再起(3) 衛遠不密・起死革生
衛生を商品化し密の復活を
【衛遠不密】 コロナ禍が永遠不滅であってはたまらないが、今年の観字に「衛」を挙げた佐藤さんは「コロナ禍が収束しようがしまいが、手指洗い、人との接触回避、3密回避など衛生観念が国民に普及した」のは間違いない。観光業界においてもガイドラインが定まり、衛生や感染防止を徹底した新しい旅行スタイルは定着した、と言っていい。
その上で、佐藤さんは「旅館ホテルの商品について、立地環境、施設、サービス、料理に続いて『衛生』が第5の商品になる」とみる。
反面、他人とのコミュニケーションもままならない疎のままであっては困る。
池田さんは「密」を「人類にとってもっとも大事」と指摘する。昨年は「新型コロナウイルスで『密』が避けられた1年でしたが、新型コロナ禍が終えんし再び『密』が受け入れられ、観光にとっても『密』の復活の年になることを希望しています」。
観光再起動へ21年に革新しよう
【起死革生】 2020年の観字に「国」を選んだ橋爪さん。オリンピックイヤーであり「観光振興に関する国策の転機になると予想した。ただコロナ禍で、私たちが経験したことのない、誰にとっても想定外の1年となった」と振り返り「ウイルス対策にあって、国ごとにまったく異なる対応がなされていることを私たちは認識した。今日の世界も、いかにグローバル化が進展しても『国』を単位としていることを確認することができた1年でもあった」。
確かに、世界各国で鎖国状態が続き、国際協調を促す機関が叩かれ、自国第一主義が鮮明になった。だからこそ2021年、橋爪さんは「起」の一文字に託した。「ワクチンが供給され、国際観光の復興にも希望が見えてくるだろう。底を見た世界中の観光業界が再起動し、競い合いながら再起を図る年としたい」。
その思いは、さらに一人ひとりに帰結した「革」を選んだ山田さんも持つ。「コロナ禍で私たちの生活やビジネスは否応なしに『変革』を求められています。新しい生活様式を進めるためにも『改革』するべきものがあり、古い権力体制や組織構造の抜本的な変革とともに『革新的』な新しい取り組みが必要となります」と指摘する。
ライバルは隣の店ではない、時代の変化だという話を聞いたことがある。コロナ禍が改革のトリガーを引いたが、抜本的な変革はそれぞれがやるか、やらないかだ。足元では「インバウンドの回復はまったく期待できず、国内旅行も団体が減少し、売上減少は避けられず、利益防衛のための新規事業開拓や経費削減に死に物狂いにならざるを得ない」(佐藤さん)ことも間違いない。
だけど、私たちは2021年、完治(収束)とまでいかなくても「寛解」(藤田さん)を目指しながら「適応」(松坂さん)していき、山田さんがいう「我々の手で『革命』を起こさなければなりません」。
その先に、観光業界の新しい地平を私たちは目にすることになる。
(トラベルニュースat 21年1月1日号)
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