新たな地平を開く 逆境下で挑む3氏(1) 北極探検家、eスポーツ、大阪・関西万博
緊急事態宣言の行ったり来たりで閉塞感が漂うなか、明けない夜はないと言い聞かせて遠くの地平に光が見えないだろうかと目を凝らしている。そんな本紙編集部にこの半月、新たな地平を開こうと挑む人たちが来てくれた。たまたま偶然に相次いで。まったく陽が射さない「極夜」の冬季に活動する犬ぞり北極探検家の山崎哲秀さん、世界28億人の巨大市場に挑む日本学生esports協会/Gameic代表理事の前川友吾さん、大阪・関西万博を見据えて舟運事業を起業したダゼロ代表取締役の山本浩司さんの3人。三人三様のチャレンジは、未来へ元気を与えてくれる話だった。
未来に元気を 三人三様のチャレンジ
物腰やわらかく、丁寧に一言ひとこと話してくれる。つねに笑みをたたえ、マイナス40度を超える極地の探検家には見えない。マラソンランナーか修行僧のような精悍な身体つきを除いては。
山崎さんは高校1年生の時に稀代の冒険家・植村直己さんの著書を手に取った。「自分の人生の展望が開けた」という衝撃的な出会いだった。植村さんの足跡をたどるように徒歩旅行やアマゾン川にチャレンジ、1989年からは北極に魅入られ現在に至るまで毎年繰り返して訪れている−。
eスポーツという言葉は知っていた。世界中で盛り上がり、プロ選手もいて大会賞金は半端ない金額というレベルの知識ぐらい。でも、しょせんゲームでしょ、家にこもって暗いというようなネガティブな、無知なおっさんが抱きそうなステレオタイプのイメージは、前川さんをひとめ見て覆された。
途方もなく広大で、しかも可能性のあるeスポーツの世界をキラキラした眼差しで、明るく気持ち良く伝えてくれる。自らもeスポーツで3つの世界タイトルを保持しているとは思えない−。
縁もゆかりもなく言葉も喋れないイタリアに突然思い立って渡航し、これまた経験もなかった料理の世界に飛び込んだ。癒し系の風ぼうからは想像しがたいが、そのフロンティアスピリットは27年経った今も変わらない。未経験の船で3年前に起業したばかり。
「コロナに負けそう」とニコニコ嘆くが、山本さんの目はしっかりと4年後を射程している−。
(トラベルニュースat 21年9月10日号)
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