福祉ではなく収益事業 京都でユニバーサルツーリズム推進(1) マーケットが広がり高付加価値を生む
すべての人が安心して誰もが旅行を楽しめる環境を整備する「ユニバーサルツーリズム」の推進を目的にしたフォーラムが7月5日、京都市の京都府立京都学・歴彩館で開かれた。一般社団法人京都バリアフリーツアーセンター(中村敦美代表理事)の主催で、京都府観光連盟や京都市観光協会、京都府旅行業協同組合なども協力した。福祉のみのイメージから脱却し、マーケットを広げ地域の魅力を増大させる高収益事業としてユニバーサルツーリズムを京都に確立することを確認した。
伊勢志摩バリアフリーツアーセンターの取り組みから
基調講演は、特定非営利活動法人日本バリアフリー観光推進機構の中村元理事長、島根県松江市の松江しんじ湖温泉なにわ一水の勝谷有史社長、観光庁の本村龍平参事官の3氏が行った。
このうち中村さんは「バリアフリー観光で増収増益」と題し、自ら2002年に立ち上げた伊勢志摩バリアフリーツアーセンター(BFTC)の取り組みなどを紹介した。伊勢神宮の遷宮で賑わう伊勢志摩エリアへ恒常的な来訪を促すため「マーケットを増やすことを考えた」と切り出した中村さん。80歳になると旅行へ行かなくなる後期高齢者は25年前で全人口の15%を占め、障がいを持った人も3%を占めていた。「こうした人たちの特徴としてコミュニティで動き、繁忙期を避けて平日に旅行することです。障がい者や高齢者を含むコミュニティは全人口の6割に達します」とし、これをバリアフリー観光マーケットと位置づけた。
彼らに必要なのは詳細なバリアの情報。「介助があれば動くことができなかった段差が3・から5・まで伸ばすことができる。身体の不自由さは一人ひとり違います。そのパーソナルバリアフリー基準をお客さん、地域の受け入れ事業者で共有することが大切です」。両者の橋渡し役をバリアフリーツアーセンターが担った。
中村さんは「家族や友人といったコミュニティで旅行すれば、さらに乗り越えられるバリアは解消されます。私たちが見落としていたすごく大きなマーケットです。コミュニティが増える観光地づくりをやってください。皆が暮らしやすいまちが実現します」と参加者に呼びかけていた。
(トラベルニュースat 2024年7月25日号)
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