彼我の差 加速する旅行市場の「二極化」
今月初旬、WTTC(世界旅行ツーリズム協議会)が発表した2025年の経済影響調査の結果では、国際旅客者による総支出額が2兆1千億ドル(約300兆円)を超え、過去最高を更新すると予測しました。さらに2035年には2兆9千億ドル(約415兆円)に達するそうです。このような世界的な旅行需要の回復と成長は、ポストコロナ時代の旅行業にとっては明るい材料と言えます。
一方で、日本国内においてはやや異なる様相が見られます。JTBが発表した2025年ゴールデンウイーク期間(4月25日―5月7日)の旅行見通しによると、総旅行者数は2345万人(前年比93・1%)、旅行消費額は9855億円(前年比96・1%)と、いずれも前年を下回っています。日本の場合、旅行への関心が冷えていると言うよりも、物価高騰と実質賃金の低下の影響によって旅行を見送った人々が増えてしまった現実が数字に反映されたと考えられます。
近年の傾向として、国内旅行者数は減少しながらも、3泊以上の宿泊を伴う旅行は増加しています。また、海外旅行においては旅行者数・費用ともに増加傾向にあり、これは経済的に余裕のある層が積極的に旅行を楽しんでいる状況を示しています。反対に、所得が伸び悩む若年層やファミリー層にとっては、ゴールデンウイークのような繁忙期における旅行が、以前のような手軽なレジャーではなくなってしまったようです。
このような状況から浮かび上がるのは、旅行市場の「二極化」の加速です。富裕層や高所得者層は、海外や長期の贅沢な旅行に向かう一方で、中間層以下はコスト負担の増加から旅行を断念する傾向が強まります。この格差は、今後さらに拡大する可能性が高く、特にインフレとコスト増による価格上昇が続けば、旅行のハードルはさらに高くなり、国内旅行市場に落とす影も大きくなってしまいます。
今後の旅行業界の課題としては…
(山田桂一郎=まちづくり観光研究所主席研究員)
(トラベルニュースat 2025年4月25日号)
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