のび太くん、外貨を稼ごう
高校生から「なぜ、日本はインバウンドを推進しているのですか」というよい質問がありました。多くの日本人が腹落ちできていない課題かもしれません。
そもそも、世界経済は70年代の変動相場制の導入により大きく変わり始めます。各国とも、特に日本は、自国通貨の円建ての国債を発行して、つまり国民が銀行に預けた預金から借り入れをして経済を成長させていきます。日本人はそれまでに稼いでいたので第三世界のように他国通貨建てではなかった点はよかったです。そして、借金で道路や鉄道、空港ができ、観光もバブルになり、観光地は栄えていきました。このころはまだまだ日本は輸出で稼げていたからです。借金も増えるとともに円高が進み、海外旅行も全盛を迎えました。国民も豊かになり、預金も増えました。しかし、輸出産業は徐々に工場を世界に移転するようになり、輸出額が減っていくのです。将来を見越した政府は、観光立国宣言をして、欧米の先進国のように、我が国も輸出ではなくサービスで外貨を稼ぎ、収支を改善しようとしました。これがインバウンドを推進するようになったきっかけです。
国の借金は大きく膨らみ、世界最大にまでなりました。借金ですから、返さなくてはいけません。外貨を稼げなくなってきた日本は、稼げないなら国民の預金から返してもらおうとして増税をしています。父親がお金を貸した人から、金を返せないなら受益者であるお前が金を返せと言われ、子どもがお金を差し出しているのが今の日本です。ジャイアンとのび太みたいですね。
他国はどうでしょう。まちづくりを進め、観光で外貨を稼ぎ、借金も返し、経済も成長しています。
なぜ観光を、特にインバウンドを進めなくてはいけないのか。それは、のび太である私たち自身の問題です。
でも、のび太には問題がありました…
(井門隆夫=國學院大學観光まちづくり学部教授)
(トラベルニュースat 2023年9月25日号)
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