海外予約サイト問題 “安さ”から持続可能へ試金石
海外大手の旅行予約サイトを通じた宿泊予約をめぐるトラブルが後を絶ちません。同社は一部事業者との取引停止といった対策を講じていますが「予約内容が異なる」「そもそも予約が入っていない」といった問題は依然として発生しています。最安値に惹かれて申し込んだ結果、旅の楽しみが一瞬で台無しです。観光庁が改善を要請しても「解決まで数カ月かかる」と運営側が答える状況では、夏の繁忙期に間に合わせることは到底困難です。
こうした中で、旅行者自身にも「選択力」が求められています。宿泊予約をする際には、価格の安さだけでなく、口コミや評判、さらには公式サイトや信頼できる旅行会社からの情報を含めて複数の選択肢を比較検討することが欠かせません。実際には、公式サイトや旅行会社経由の方が結果的に安い場合もあり、またトラブルが発生した際の対応も迅速です。旅行の安心や快適さは、こうした下調べと慎重な判断の積み重ねが重要になっています。
一方で、旅行業界にとっても課題は明らかです。「安さ」だけを前面に出して顧客を集めるのではなく「なぜそのサービスが選ばれるのか」という理由を築き上げる姿勢が不可欠です。観光・旅行産業の土台は、交通機関、宿泊施設、旅行会社といった旅行者が接するすべての場面における安心と信頼です。この基盤が揺らげば、持続可能な観光の発展は望めません。今後、旅行者は価格と価値をより厳しく見極めるようになり、業界には一層の真価が問われるでしょう。
さらに社会全体を見渡すと…
(山田桂一郎=まちづくり観光研究所主席研究員)
(トラベルニュースat 2025年8月25日号)
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