台湾有事発言 民間交流こそ観光立国の礎
高市早苗首相の台湾有事をめぐる発言をきっかけに、中国政府が対抗措置として日本に対してプレッシャーをかけ続けています。最近では、訪日自粛や水産物の輸入停止など、影響の広がりが報じられており、この緊張がどこまで波及するのか、現時点では見通せません。
中でも最も憂慮すべきは、インバウンド市場の痛手です。観光立国を目指す日本にとって、中国は最大の訪日市場の一つです。実際、2024年には中国からの年間訪日客が約698万人、旅行消費額は1兆7千億円に達しました。さらに2025年1―10月には前年同期比で40・7%増の820万人を超え、消費額でも24%を占めるなど、無視できる市場ではありません。
先日の「中国から日本行き航空便49万件キャンセル」報道は衝撃的でしたが、これは全予約の32%であり、逆に言えば、残り約68%の旅行者は予約をキャンセルしていません。多くの中国人は日本行きを諦めていないとも言えます。しかも、キャンセルは主に団体ツアーに限られており、コロナ禍前の団体観光が中心だった時代と現在では様相が変わっています。
実際、2019年には訪日中国人団体ツアーは全体の約3割だったのが、2024年にはそれが約1割にまで減り、現在は個人手配の旅行者が多数を占めています。今回のキャンセル急増は団体ツアー主体の旅行会社に打撃を与えているものの、自ら判断して行動する個人旅行者の動きは途絶えていないのです。
旅行や交流とは、単なる経済行動ではありません…
(山田桂一郎=まちづくり観光研究所主席研究員)
(トラベルニュースat 2025年11月25日号)
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