過去最多の訪日客 “量”の重視から政策再設計を
1―11月の訪日外国人客数が3906万5600人となり、過去最多を記録したものの、多くのメディアは日中関係の悪化が大きな懸念材料だと報じています。中国からの訪日客減少を過度に悲観する必要はなく、これまで指摘した通り、今もビジネス客や個人旅行者の動きは大きく変わっていません。確かに、中国市場に頼ってきた事業者や地域にとっては大きな打撃となりますが、それは「中国人が減った」こと自体よりも、特定市場への依存度が高すぎた構造の問題でもあります。
一方で、中国以外の国・地域からの訪日客は堅調に増加しており、欧米や東南アジア、中東など多様な地域からの来訪が拡大しています。結果として、インバウンド市場全体としては、以前よりも分散と安定が進んでいると見るべきでしょう。
むしろ本質的な問題は、訪日外国人旅行者が年間4千万人に達しようとしている今でも、政府の政策・施策が「6千万人達成ありき」から一歩も動いていない点にあります。かつて掲げられた数値目標は、コロナ禍を経て国際移動の前提や地域環境が大きく変化したにも関わらず十分な総括や再設計が行われているとはとても言えません。
すでに都市部や主要観光地では、交通混雑や宿泊費の高騰、住環境への影響、地域住民との摩擦など、受容力の限界を示す兆候が顕在化しています。4千万人の段階でこれだけの歪みが生じている中で、さらに5割増の6千万人を目指した場合、どのような負荷がかかるのかについて、具体的な検証が必要です。政府は「量から質」への転換を掲げていますが、目標設定や評価軸は依然として訪日客数という量的指標が重視されたままです…
(山田桂一郎=まちづくり観光研究所主席研究員)
(トラベルニュースat 2026年1月1日号)
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