26年の訪日客予測 質の向上へ転換する好機
JTBが今月上旬に発表した2026年の訪日客数予測は、前年比2・8%減の4140万人でした。主な要因は中国・香港市場の落ち込みとされていますが、この数字を単なる一時的な需要変動として捉えるのは危険です。むしろ、日本のインバウンド政策が「量の拡大」を前提とした成長モデルから「質の向上」へ本格的に転換する局面に入ったことを示していると見るべきでしょう。
これまでのインバウンド拡大は、ビザの緩和、国際線増便、円安、そして世界的な日本ブームといった外部要因に大きく支えられてきました。しかし現在は、地政学リスクや国際関係の変化が、観光需要に直接影響を及ぼす時代です。特定市場への依存が、観光産業全体の脆弱性を高めることも、今回の予測は改めて浮き彫りにしました。
一方で注目すべきは、訪日客数が減少するにもかかわらず、総消費額は増加する見通しが立っている点です。滞在期間が長く、消費単価の高い欧米・オーストラリア市場へのシフトや、市場全体のリピーター化が進んでいることの表れでもあります。また、人口減少により人手不足が進む日本において、国内旅行市場も「数を追えない段階」に入っています。
重要なのは、地域がこの変化をどのように受け止めるかです。短期的な客数回復を追い求めるのではなく「誰が、どこで、どれだけ滞在し、いくら使い、地域にどのような価値を残したのか」を指標の柱にすることにより、地域として数量に依存した観光から脱却し、高付加価値化をさらに進めることが求められます…
(山田桂一郎=まちづくり観光研究所主席研究員)
(トラベルニュースat 2026年1月25日号)
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