宿と客で“心の密”構築
新型コロナウイルス感染症拡大で自粛ムードだった観光業界。ようやく他県への往来も緩和され、7月1日を契機に営業を再開した旅館ホテルも多い。休館中には安心・安全の感染防止対策を講じ、待ちに待った営業再開最初の土曜日、熊本県南部を中心に豪雨が襲った。球磨川が氾らんし、各地で土砂崩れや浸水が発生、多くの方が犠牲になった。心からお見舞い申しあげたい。
被害の大きかった人吉市内の旅館では、宿の2階まで浸水したところもあった。A旅館では130人ほどが宿泊していたが、川の氾らんで1階が水没。宿泊客は帰れず連泊することになった。その間、旅館の社員総出で料理を出してもてなし、3日目に無事帰還いただいた。客が帰った後の客室に入ると1万円札が入った封筒が置かれていた。非常事態のなか、もてなしてくれた感謝と励ましの言葉が添えられていた。それを見た女将は感極まり号泣したという。営業自粛からようやくリスタートし、その直後の災害。同じ被災者であるはずの宿泊客の励ましほど、旅館関係者の心を奮い立たせるものはなかったのだろうと推測する。
旅館が最も得意とする客との密の関係ができなくなり、新たな接客が問われる中、旅館で接待する側と宿泊する側とのお互いの“心の密”を人吉の旅館で垣間見た。
(トラベルニュースat 20年7月10日号)
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