岩木語録が伝える「情」
発足50周年を記念して日本秘湯を守る会が会を創設した岩木一二三さんの語録をまとめた。
「『秘湯』という造語を生み出した人物であり、昭和の時代に提唱された言葉が今の時代においても宿を営む者にとって、大切な心構えであると思い知らされます」と、同会の佐藤好億名誉会長(福島県・大丸あすなろ荘)が話していた通り、宿や温泉だけでなく、それらを取り巻く地域について誰よりも真剣に考え、愛をもって説いており、観光業界に身を置く者に様々な示唆に富んだ語録だ。
「宿の個性は何か、そして、それを理解していただく表現ができているだろうか。すべてに思いやりを通わせた心遣いの宿だろうかということが大切なのです。従業員の精神面をどう育んでいくかということも鍵になります」
「いい設備もいい料理ももちろん必要ですが、最終的にはこれを生かすも殺すのも、人の情以外に何ものでもありません」
語録を読んでいくにつれ、機能と効率ばかりに走り過ぎて「情」がどこかに置き去りにされているように見える今の旅館の姿が見え隠れする。岩木語録には「旅館商売から情を取ったら、何も残らない」といった記載が何度も出てくることをお伝えしておきたい。
(トラベルニュースat 24年3月25日号)
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