抗わず、やり過ごす 緊急提言・新型コロナウイルス禍、観光業界が今できること(1) “種まき”の貴重な時間に
新型コロナウイルス(COVID19)の感染拡大が止まらない。感染拡大にとどまらず経済活動を著しく減退させている。観光分野では、1月下旬の春節のころは中国人観光客など訪日旅行での限定的な事象と思われたが、その後はご存知の通り自粛要請で、観光市場全体が一気にシュリンクしてしまった。観光業界にとっては未曽有の危機と言えるような状況下、回答を持ち合わせていないけれども、観光業界専門紙として発信できることはあるのではないか―と、編集部で意見を持ち寄ってみた。
「平静を保ち、普段の生活を続けよ」 自然災害と付き合ってきた日本人だからこそ
―我々がマスコミと同じように、傷口に塩を塗るような報道をしても仕方がない。弊紙の読者の皆さんが少しでも前向きに、元気になれるような紙面にしたい。
A ここ数年、思いも寄らないところが台風や豪雨に見舞われ、自然災害への備えが必要だと思ってきた。しかし、日本のみならず世界全体で渡航制限や入国制限が行われたことは過去にはなかった。
B 言葉は悪いが、災害に伴う風評を含めた被害は地域的に限定され、一部では劇薬と言われるけれど「ふっこう割」など処方箋がないわけではない。でも、COVID19に効果的な薬が見つけられていないのと同様に、世界規模となるとどうしたものか…。
―おいおい、話題が暗いぞ。
C 日本人は自然災害とは長い間、付き合ってきた。それは正面から戦うのではなくて、やり過ごし、回復するという方法で。たった1人でコロナに立ち向かったり、乗り越えようとするより、かわしたり、風に吹かれる暖簾みたいに、いらっしゃいませ、でも、もう来ないでねってやり過ごせるはず。
B そう。私たちの祖先は、恐れや死すらも近しいものにして敬ってきた。八百万の神なんてまさに、今ふうに言うとダイバーシティだ。目に見えないものを過剰に恐れて忌み嫌い遠ざけるのは、自粛という言葉で思考停止を増長するばかりだと思う。抗わず受け入れる祖先の知恵が今必要なんじゃないかな。
A 山の遭難で最も多いのは「道迷い」と聞いた。やってはいけないと分かっているはずなのに不安からウロウロしてしまうそうだ。人間には、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価してしまう特性があるらしい。山で道に迷ったら、引き返す、動かず体力を温存するのが鉄則。新型コロナウイルスと山の遭難を結びつけるのはどうかとも思うが、今はじっと我慢して、この騒動が収束した時にすぐ動けるように種まきをする。種まきができる貴重な時間を授かったと前向きに受け取って、今できることを考えたい。
C 第二次大戦直前のイギリスのポスターの文言だそうだけど「平静を保ち、普段の生活を続けよ」というのを基本にしていいと思う。
(トラベルニュースat 20年3月10日号)
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