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観光業界の未来を紡ぐ 鈴木治彦vs星永重・全旅連青年部部長対談(6) 日本経済、地方経済の主役に

現状を見直し次の準備を

―いま最優先で取り組むべきことは何だと思っていますか?

鈴木 現状の見直し。いま業績がGo Toで良かったところも、悪かったところも両極端で、真ん中がない状況じゃないですか。過去最高や過去最高に近いか、もしくは過去最低か過去最低に近い、そのどっちかに振れている。どちらにしても現状の見直しだと思いますね。

 長期ビジョンの策定。本来そんなに変わるはずはないんですが、外部環境で影響された部分をどう修正するかという部分も含めて、自分たちのロードマップがぶれていないのか確認をしないといけない時期。それは国もそうですし、業界もそう。いつ何をする、いつまでに何をするのかという話が影響されたことでブレてしまっているのが面白くない。

鈴木 たいへんだ、たいへんだと言っていても去年1年はあっという間に経ったじゃないですか。仮にあと1年この状態が続いたとしても、1年後に「1年あっという間だったなぁ」と言うだけだと思うんですよね。絶対にそうなるので、しっかりこの1年で前へ進むための準備、見直しができていないと、次の1年にしっかり現れてくる。

 楽しみなのは大阪・関西万博です。2025年なので僕の期を越えていますが、万博の時に東日本にも潤いが出るようにしたいなぁと思っています。もちろんオリンピックがありますが、観光需要は分からないので。

鈴木 たぶんオリンピックは海外からの観戦客を入れないことになる。国内だけで回すとなると皆が、東京や会場付近に集中することになると思います。我々西日本や、競技エリアと関係しないところは今と同じ不況を迎えるはずです。コロナが終わっていたとしても。そこは、今から考えておかないといけない。

今のGo Toの予算は6月までということになっていますが、あの予算の取り方はそれ以降も織り込み済みでしょう。ということはオリンピック期間中に日本人だけを動かすのであれば、地方が泣くという想定だと思っています。

 だからこそ、宿フェスの話はいいきっかけになると思うんです。話さないと何も始まらない。地方でも、僕らがんばっていますと叫んでも、行政と話をしないと何もならない。我々も観光庁を含めてもっと喋らないと。喋ったら喋った分だけ失敗もありますけど、異なるフィールドが見えると思う。それは喋り続けて働きかけをこちらからし続けることと、現状を見直すこと。そして長期がブレていないことをしっかり確認して進むことだろうと思います。

―今期を振り返ってブレたことは何でしょうか。

 インバウンドの影響が後倒しになることで、経営自体が全部違うものに変換されなければいけなくなったこと。2年は下ぶれするわけで、どう下ぶれしないように動くのか。下ぶれした、しなかったということにとらわれず5年後、10年後を変わらずにいられる働きができるか、どうかでしょうね。

鈴木 いい意味で宿泊業界の人たちは素直で真面目なんです。国の政策がインバウンドってなると、みんなそっちの方向に向いてしまうし、インバウンドがダメだから事業転換の予算をつけるとなると、みんな事業転換のことを考え始めます。振り回されているわけではないけれども真面目過ぎる。その予算をしっかりとりながら、自分の本丸のところに入れていけばいくことを考えてもいいと思います。

 自分で選べるようにしてくのは、OTAなど販路もそうですが、経営全般がそうです。自分でチョイスして、それがやりたい方向に行ける施策かどうか。そうでないと流されちゃうだけになってしまいます。

鈴木 コロナがあったからGo Toがあって、自民党総裁選の菅さんの出陣式という副産物もありました(※編集部注=菅義偉首相の自民党総裁選出陣式で、鈴木部長が民間を代表して応援演説3人の1人に選ばれた)。省庁から全旅連青年部の見られ方が今までと圧倒的に変わったと執行部は肌で感じています。

―全旅連本部の多田計介会長が言っていたように宿泊業界の歴史的出来事でしたね。

鈴木 あと10年も経てば、あんなこともあったなとただの歴史の1ページにしていくことが自分らの仕事ですから。自分たちからしたらまだ全然。やっとスタートに立てたぐらいかな、と思っています。

―最後に青年部員、若手の経営者にメッセージをお願いします。

鈴木 いまコロナを経験し、青年部に入っているだけではなく出向というのがメリットです。情報を今日キャッチするのか、明後日キャッチするのかで全然動きが変わってくる。そこは出向者の中でも役職者が多少早いので、しっかり役を持って責任を持って動いてもらえれば、それが自分の施設や地域に役に立っていくことが一番実感できるタイミングです。たぶん今までの何十倍のメリットだと思います。

 主役やで、というのを青年部のみんなに伝えたいですね。主役なので、日本経済にとっても我々の産業は主役。基幹産業に名実ともになろうとも言っていますので、今これからやることが地方でも旅館でも、あなた方が主役ですよということはメッセージとして伝えていきたいですね。 それは、自分にもしっかり言い聞かせて、主役らしい振る舞いをしっかりやっていきたいと思います。

―ありがとうございました。

(トラベルニュースat 21年2月10日号)

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