「美内すずえ作 歌劇『紅天女』」 壮大なオペラとして上演された長篇コミックの劇中劇
歌劇『紅天女』を見てきた。と言っても、フーンとしか反応がない人は、サブカルチャーに無縁な人だと思う。
『紅天女』とは、ついに世紀をまたいでしまった超大河演劇ロマン『ガラスの仮面』(略称ガラカメ)の中に出てくる劇中劇なのである。
ガラカメは美内すずえさんの作品で、1976年の連載開始以来40年以上になるのに、いまだ完結をみていない大長編コミック。北島マヤという少女が幾多の試練を経て、大女優になっていくまでを描くブタ根(スポ根に対抗してこう言う)もの。そんなマヤが1千年の樹齢を誇る梅の木の精を演じる芝居が、この『紅天女』という設定なのだ。
本編のマヤの物語とは別に、この『紅天女』を独立させたものとして舞台にかけようという試みが2006年から続いていて、それが能の『紅天女』だ。しかし、能の形式では語り切れない物語の起伏があり、今度はそれをオペラにしようとそれに美内さんが台本を提供、日本オペラ協会が全面的な支援体制を組んで、堂々上演時間3時間20分の大作として上演されたのがこの公演。
時は南北朝。天変地異の連続で苦しむ民を救うには、紅天女の像を腕ある仏師に彫らせるがよいと帝にお告げがあった。やがて、一真という仏師が見つかり、彼は幻の天女を求めて吉野の森、深くに行くが…
(松坂健=元跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授)
(トラベルニュースat 2020年1月25日号)
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