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講釈師が語る一休さん十 喉元の「関所」でお預かり

三代将軍足利義満公に招かれた周建は昼食に出された戒律を破る食材が並んだお膳を全て平らげてしまう。

「周建。如何であったな?」「あぁ殿様、大変に美味しゅう御座います」「さりながら魚肉を食したな。汝の師である像外すら手を付けようとせなんだが、何故弟子でありながら、そちは五つの戒めを破ったのじゃ」「私は決して食べたのではございません。ただ魚肉が口の中を潜っただけでございます。私の喉は鎌倉街道で腹の中は天下の往来。魚屋も通れば米屋も通る餅屋も通れば菓子屋も通りますので、只今は魚屋が通りましたので」「では、其の街道は農・工・商ばかりが通る道ではあるまい。武士も折々通行するであろうな」「無論通りまするな」「しからば、天下の往来へこれなる武士を余の面前において街道に通してみよ」

掛けていた朱鞘の太刀をギラリ抜き払い周建の前ぴたりと構えると。居並ぶ家来は静まり返り、像外和尚は真っ青になる。

「双葉にして断たざれば、斧を用いる憂いありと考えられたのか。わしはもうどうする事も出来んわ」

師匠の心配をよそに周建は至って落ち着き払い「お言葉でございまするが、只今は泰平の世。これなる武士はまっこと怪しきばかり。よもや南朝方の謀反を企てている不届き者かもしれませぬ。素性を改めるために、ゴホンゴホン。たった今、喉元に『関所』を設けました。一旦お預かり致します」…

(旭堂南龍=講談師)

(トラベルニュースat 2020年12月10日号)

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