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講釈師が語る一休さんの二十四 物乞い姿から一変の立派な袈裟

一休禅師は、相も変わらず墨衣に破れ笠杖を手に、空に浮かぶ雲が風に流されるが如く、足が向くまま気の向くまま。京都の町中で托鉢へ出かけます。立派な大金持ちと思しき邸宅の前で多くの僧侶や親類縁者が集まり盛大な法要を行っておりましたから、これ幸いと一休禅師が門に立ち食(じき)を乞いました。

「お頼み申します。」「へーい。これはどちらさ…まぁ汚い恰好やな。汚い坊さんやな。ひょっとしてご先祖様の法要に当て込んで、物乞い同然の坊さんも寄って来ました。困ったなぁ。今日はお偉いご住職もおいでになるねや。あんな物が立ってたらいかんがな。今の内に追っ払おうてしまう。これ、そこの小汚い坊主」「はぁ、何じゃな」「困るがな、これから御先祖様の大事に法要があるねや。お前さんみたいな、坊主が立ってたら、御先祖様に申し訳がない。早う向こうへ行きなはれ」「何卒、御報謝を」「御報謝? もうしようがないな。ほたら之でも持って行って、二度と来たらいかんで」「ありがとうございます」

と生き仏と名高い一休禅師を見た目だけで判断し、僅かばかりの金品で追っ払ってしまいます。ところが後日、またもや法事が営まれた折、今度は一休禅師は立派な袈裟衣を身に付けて此の屋敷へ立ち寄りました。

「お邪魔致しますぞ」「へ―い、これはどちらさ…まぁ立派なご住職様で、初めてお目に掛かりますが、誠にご無礼でございますが、一体?」「ワシは、一休じゃ」「ええ?あの生き仏と評判の一休禅師様が、何でまた」「実はワシの夢枕にお主の御先祖様が立たれてのう。何卒法要を願いたいと告げられ、立ち寄ったのじゃ」…

(旭堂南龍=講談師)

(トラベルニュースat 2022年5月10日号)

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