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講釈師が語る円山応挙その二 紫、形見の「唐錦の匂袋」出す

「私が全盛のころには、米つきバッタのようにぺこぺこと頭を下げて、こちらに何かと気を遣ってくれましたが、この通り私が病に罹ってからというものは『早う死ね、死んでしまえ』とばかりに、医者はおろか、薬すら飲ましてもろうた覚えはございません」「不憫な話じゃ。しかしながら、お前さんにも身より頼りという者があるやろう」「誰もございませんので」「生まれはどこや」「覚えておりません」「二親は」「分かりませんので」「可哀想に長い間の病で何にも分からんようになってしもうたんか」「いいえ、そうでございません。要は覚えておりません、ただ、小さい時に天神さんの境内で遊んでおりました処、いきなり人さらいに遭いまして、人の手から人の手へ渡って、果てはこんな情けない稼業。その上このような病では、もう助かる見込みもございません」「これこれ、世の中そう、見捨てたもんやない。一寸先は闇と言うが、一寸先は朝が来るとも言う。気を落としたらイカン。で、私はな、旅回りの絵師をしている。旅から旅の途中でひょっとしたら、お前さんの身より頼りが見付けることができるかも分からん。こう何か手掛かりになるようなもんは持ってやないか?」]

応挙の優しい言葉に、紫はツーと涙を零し乍ら

「ありがとう存じます。今まで人様からこんなお情けを掛けていただいたことはございません。それではお言葉に甘えて」

枕の下から取り出したのは唐錦で拵えられた匂袋…

(旭堂南龍=講談師)

(トラベルニュースat 2024年6月10日号)

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