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レジャーから短期移住へ事業転換

旅館の世代交代が進んでいます。50年間観光を支えてくれた団塊世代からそのジュニア世代へ。最多人口年齢が74歳から50歳に下がるのに合わせ、経営のあり方も分化し始めました。

ひとつはこれまでの観光と同じキリギリス型。週末など需要の多い時期に稼ぐ方式です。この方式は、大型化×効率化か、家族だけ経営化で生き続けていきます。大江戸温泉物語と湯快リゾートが経営統合するように、客室規模の経済が活きます。93年から資本規模で生産性に差が付き始めたように、資本投下こそが成否を分けます。これからは観光産業のM&Aにより地域で複数事業を持ち地域経済をけん引する事業者が増えていくでしょう。

また、従業員を雇わずに家族だけで週休3―4日で経営するスタイルも生き続けます。旅館業は80年に最多の8万軒を数えて以後、30年には2万軒を割るはずです。そのころに生まれる新生児数は団塊世代の4分の1以下ですから、50年後にそうなるのは当然です。しかし、後継者がいる家族だけ経営旅館は、提供者数が減ることによりしっかりと需要を獲得し続けることでしょう。

おそらく今後、大浴場や修学旅行が消えていくはずです。他人と同じ風呂に入れない子どもが増え、経済格差が学校行事を減らすこれから、伝統型の旅館は、日本遺産として価値を発信し続けることになっているかもしれません。

一方、今後増えるのが車中泊とアリ型旅館。これまでの観光が高嶺の花となり、新しい観光は短期移住と再定義されて日常生活に組み込まれ、定期的に地方に通う需要が芽生えます。そうした需要を獲得する宿は、いわゆる会員制となり、稼働は常に高く、予約の取れる日に暮らすように滞在するスタイルになります。それは仕事も療養も、あらゆる生活を包含した一時移住です…

(井門隆夫=國學院大學観光まちづくり学部教授)

(トラベルニュースat 2023年6月25日号)

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