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地域を支える事業こそ宿文化

天国の松坂健先生、お元気ですか。30年前、先生やリーコの佐藤先生と「これから泊食分離をすべきだ」と主張し、1泊2食は旅館の文化だと反論をよく受けましたね。

バブルがはじけたあの時代は人口減少が始まる直前。1994年の出生数は125万人でしたが、2023年は75万人まで減りました。75万人が90歳まで生き、もう人口が減らないと仮定しても、90年後には日本の人口は4千万人。人口が年間訪日外国人数より少ない国になっているでしょう。

泊食分離も、当時は食事代金を可変させて値下げすべきではないという意義と、連泊を増やすべきだという目標がありました。でも今は、料理人がもういないので、やむを得ず泊食分離をせざるを得ないのです。それでも長期負債を減らしてきたのでできるようになりました。草津や城崎では新しい宿は素泊まり型を採用しています。なんとドラマでも泊食分離で事業再生しようというシナリオが流れていました。

和食は旅館文化ですが、1泊2食は旅館文化と言い続けられない時代になったと思います。

そして外資系のハイアットが箱根と由布と屋久島で温泉旅館経営を始めるそうです。旅館はどんどん変わっていくのでしょう。おそらく同時に不動産投資にまみれ、地元民が移住し始める時代も垣間見えます。90%の観光客が5%の観光地に集中する現在の観光を変えていかない限り、この産業は地域を破壊していきます。これからは名も知られない過疎地にひっそりと建つ小さな宿が地域を支え、一次産業や教育を維持していくことを構想していきたいと思います。地域とつながり、地域を支える事業こそ脈々と続く旅館文化です…

(井門隆夫=國學院大學観光まちづくり学部教授)

(トラベルニュースat 2024年6月25日号)

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