中小旅行会社の役割 団体復活の幻影を追うな
昨年末の水際対策の緩和以降、インバウンド市場が急速に回復していることは前回の当コラムでも触れました。今年の3月には新型コロナパンデミック前の水準の約3分の2まで戻り、4月は2019年同月比66・6%の約195万人まで持ち直しています(個人旅行再開後の最高値)。
インバウンド復活の流れに上手く乗ることで売上を伸ばす飲食店、宿泊事業者、商店などが全国的に増えている一方で、なぜか中小の旅行会社の多くはその恩恵を受けていないように見えます。
先日、ある地方でお会いした旅行会社の方が「新型コロナでビジネスが散々だ。全国旅行支援の事務処理が煩雑。顧客は年寄りが多く、スマホの操作から教えている。宴会需要が戻ってきたと思ったら旅館も人手不足で受け入れてくれない。昔のような団体旅行が戻ってきてほしい…」と話しておられ、昭和時代に戻ったかのような発言に衝撃を受けました。
一体、「昔のような団体旅行」とは何でしょうか? それは、ほとんど何もしなくても自社を利用して定期的に各地へ旅行に出掛けてくれる法人や老人会などの団体客のことを指しているのでしょうか? もしそうだとしたら、それは妄想以外の何ものでもありません。旅行スタイルの個人化が叫ばれるようになってから四半世紀以上が経ちます。しかも、人口減少社会に拍車が掛かる中、旅行者数ではなく消費額で見れば個人旅行が国内市場の9割を占め、そのうちの8割の消費は全国民のたった3割のものです。
大手旅行会社ですら本業の売上は年々減少し、公的委託事業などで利益を確保する時代です。中小の旅行会社が本業以外でも収益の柱を持つ…
(山田桂一郎=まちづくり観光研究所主席研究員)
(トラベルニュースat 2023年6月25日号)
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