楽しく読めて ときどき役に立つ観光・旅行専門紙「トラベルニュースat」

「調和」こそ宿満足の本質 ホテルグランメール山海荘(青森県)

2019年10月29日(火) この宿のウェルカムドリンクは林檎ジュース。特産品での出迎えは嬉しく、あえて小さなグラスを使うのは、じっくり味わってもらうための配慮でしょう。紙やプラのカップで済ませる宿も多い中、ガラスのコップは受ける印象が断然違います。

ラウンジではコーヒー・紅茶がセルフで飲み放題ですが、滞在中は何かと忙しく全サービスを利用し尽くすのは困難。結局利用せずにチェックアウト時間を迎え、残念に思いながら念のためにラウンジの営業時間を確認すると、なんと11時まで利用可能。チェックアウト後はすぐに帰れと言わんばかりの宿が多い中、こんな粋な計らいができる宿があるとは。わずかな違いですが、こういう部分が客のツボなのです。それを宿に気づいてもらえたと感じ、天に登るような嬉しさに包まれました。

温泉泉質も良好で温度が低いので加熱ですが、非加熱の源泉浴槽も完備。男湯の初日は和風の岩風呂で、翌日はタイル張りの洋風風呂。男女交代しても代わり映えしない大浴場が多い中で風情が明確に異なる魅力的な浴場は称賛に値します。

外観は西洋の城のようですが、客室は和室が主体。館内のいたるところから日本海を望み、裏手には津軽富士が鎮座し、いずれも絶景。レストランを含めて浴衣OKとフロントで聞き、我が意を得たりと思うと同時に、心底安心しました。

温泉宿では旅装を解き浴衣に着替えることが、客の心の中で大きな契機になります。日常の現実から解放され、非日常の世界で癒やしを享受し、楽しむ準備が整うのです。まるで神社の鳥居のように、神聖な場所に入る門であり結界にも例えられるでしょう。

つまり温泉では、浴衣こそが紛れもなく正装であり、それを認めないのは愚の骨頂。レストランへ行く前に浴衣を強制的に脱がされるのは、これ以上ない興ざめ…

(藤田聡=温泉研究家)

(トラベルニュースat 2020年3月10日号)

続きをご覧になりたい方は本紙をご購読ください
この記事をシェアする
購読申し込み
今読まれているニュース
地旅
今すぐにでも出たくなる旅 最新
「光る君へ」稀代の女流作家の足跡求め・滋賀大津

後世に深く濃く語り継がれる名作を描いた女流作家は、混沌とする世の中を、愛を持って駆け抜けた...

和歌山龍神に輝く夕夜景

大阪の中心部から車で約2時間、南紀白浜空港から1時間ほどの距離に位置する和歌山県田辺市龍神...

サステナブルアイランド四国への誘い・愛媛編

四国が進める観光のテーマは「持続可能」だ。社会全体のテーマとしてもはや中心に座りつつあるサ...

トラベルニュース社の出版物
トラベルニュースat

観光・旅行業界の今に迫る面白くてときどき役に立つ専門紙。月2回発行

大阪案内所要覧

旅行業務必携。大阪にある全国の出先案内所収録。19年版発売中!

旅行業者さく引

セールス必携。近畿エリア全登録旅行業者を掲載。22年版発売中!

夕陽と語らいの宿ネットワーク
まちづくり観光研究所
地旅
関西から文化力
トラベルニュースは
文化庁が提唱する
「関西元気文化圏」の
パートナーメディアです。
九観どっとねっと
ページ
トップへ