和食を考える 「おせち」は究極の健康食
日ごと寒さが厳しくなり、朝の空気は凛としていて、温泉の湯けむりが立ち上がる様子は一層味わい深くなってきました。温泉地としては、温泉の醍醐味をもっとも味わいやすい季節でありがたいことです。
テレビで雪景色を見ながら、車のタイヤをスタッドレスに履き替えました。日本は地域によっても本当に四季の顔が違い、これも日本の良いところだなと感じます。
先日は、岡山・牛窓でのシンポジウムに参加させていただきました。医療の現場で考える健康への向き合い方を、私は料理の面からどのように生かしていくことができるかをお話しさせていただきました。医療のように直接的な治療ではありませんが、人が生きていく中で口にする様々な料理を少しの改善でより健康に導くことができるのは素晴らしいことです。
また、私たちが当たり前のように口にしている昔からの和食も、実は昔の人々の知恵と工夫で健康になるように考えられた料理になっていることも、皆さん興味深く聞いてくださいました。
いざ旅行に来られるお客様は「この日ばかりは」と、普段我慢しているものも食べたいと考えられますが、そんな方々にも優しいのが和食の良さだと思います。素材の味だけでも十分に楽しめるものには本当に多いですが、それに料理人の技や知恵を入れ、日常よりも贅沢に、しかも健康を考えられた料理に仕上げていけるのは料理人としても腕が鳴りますね。
年末年始が近づき、気合の入る新年料理に頭を悩ませている料理長も多いことと思いますが、「おせち料理」ほど健康を考えた日本料理はありません。料理長は、器や盛りつけにも趣向を凝らし、自分の新しい「おせち」を考えていってください。
私も自身の旅館や各地を回らせていただく中で…
(大田忠道=料理人集団「天地の会」代表)
(トラベルニュースat 2023年12月10日号)
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