楽しく読めて ときどき役に立つ観光・旅行専門紙「トラベルニュースat」

大阪湾水上コミュータ構想

大阪湾は南北に約60キロメートル、東西に約30キロメートルに広がる大きな湾です。北の奥に大阪市と神戸市という二大都市があり、かつては小型客船による舟運が盛んでした。

自動車社会に移行した後も、車と人を運ぶカーフェリーや、人だけを高速で運ぶ高速旅客船が多くの航路で活躍していました。この状況が一変したのは、明石海峡大橋が開通して陸路がつながって、車で対岸まで行き来ができるようになったことでした。

こうして廃れた大阪湾の海上交通でしたが、一度、復活の機運が盛り上がったことがありました。それが関西国際空港が開設された時で、国もあげて空港への海上アクセスの可能性を調査しました。そして、神戸市街と関西空港を結ぶ海上ルートが開設されましたが、湾岸に沿って整備された高速道路網が強力なライバルとなり、存続の危機を迎えた時もありました。その後、神戸空港が開港されて、関西国際空港とを海上を一直線で結ぶメリットが見直されて、今もその航路が維持されています。

そして、再び、小型船による海上アクセスが注目を集めています。それが、大阪湾の埋め立て地である大阪市の人工島「舞洲」で開催される大阪・関西万博であり、さらに同じ島に建設が予定されている統合リゾート施設IRです。大阪湾に面した人工島に集客施設が相次いで登場することとなり、ここに海の玄関口ができれば、大きなメリットとなります。

ただし、小型客船による海上アクセスの経営は思ったほど容易ではありません。それは鉄道やバスなどの陸上輸送との競合の中で、それに対する競争力を確保するのが難しいためです。海上を直線で結ぶ短絡効果がある航路であっても、船のスピードは陸上交通機関に劣ることが多く、さらに船の初期投資額は大きく、運航要員も高度専門職であるために人件費が高くなります。

しかし海外に目を転じれば、都市周辺での海上コミュータが発達している大都市は少なくはありません…

(池田良穂=大阪府立大学名誉教授・客員教授)

(トラベルニュースat 2023年10月10日号)

続きをご覧になりたい方は本紙をご購読ください
この記事をシェアする
購読申し込み
今読まれているニュース
地旅
今すぐにでも出たくなる旅 最新
個性全開、輝き増す山陰紀行・島根鳥取西部編

島根県では美肌県を前面に、2023年に高視聴率を記録したテレビドラマ「VIVANT」のロケ...

個性全開、輝き増す山陰紀行・鳥取東部三朝編

「蟹取県」「星取県」に続き、辰年の今年は「とっとリュウ県」―。県の形が龍に見える?ことから...

「光る君へ」稀代の女流作家の足跡求め・滋賀大津

後世に深く濃く語り継がれる名作を描いた女流作家は、混沌とする世の中を、愛を持って駆け抜けた...

トラベルニュース社の出版物
トラベルニュースat

観光・旅行業界の今に迫る面白くてときどき役に立つ専門紙。月2回発行

大阪案内所要覧

旅行業務必携。大阪にある全国の出先案内所収録。19年版発売中!

旅行業者さく引

セールス必携。近畿エリア全登録旅行業者を掲載。22年版発売中!

夕陽と語らいの宿ネットワーク
まちづくり観光研究所
地旅
関西から文化力
トラベルニュースは
文化庁が提唱する
「関西元気文化圏」の
パートナーメディアです。
九観どっとねっと
ページ
トップへ